今更って感ありありのソロ作品解説…					
										
各曲に対する思い入れや作曲時の心情を吐露する術を、残念ながら俺は持ち合わせていない。					
よって解説は、昨年7月に2週間に渡って行われたレコーディング風景の一部やその過程と				
技術的側面の報告に終始し、筆を進めて行きたいと思う。					
					
					
【午前3:16】 					
					
ステレオ・リングモジュレーターと聞いて、					
「そんなもん、ある訳ねぇ」と懐疑する諸兄もおられることだろうが、実際それは存在する。					
この曲に参加している高野敏は、ミュージシャンでありながら有能な技術者でもあるのだが、					
土屋昌巳氏などに自作のエフェクターを提供していることは、あまり知られてはいない。					
その彼が製作したステレオ・リングモジュレーターが、この曲で大きな役割を果たしている。					
俺はアリババスタジオの片隅にあったオモチャのパイプをブルブル振り回し、					
ボリュームペダルで制御されたロングトーンギターを鳴らしている。

								
【夢の幻】 					
				
Machine & the Synergetic Nuts 全面参加。					
短時間でこの曲の方向性を解してもらえると確信して、みんなに参加を要請。					
あらかじめMIDIで作成していたフレーズを、手弾きで再現してもらったのだが、				
思惑通り録音はリハーサルを含めトータル3時間程で終了した。					
須藤俊明のドラムセットはスネアーとハイハットとシンバルのみ。									
ソプラノ・サックスはいつもの如くマヒマヒ節。
鍵盤は岩田ノリヤの希望でピアネットを使用。									
休憩中、試しにみんなでコーラスを入れて遊んでみようとの意見が出て、ノリノリで実行。					
ビーチボーイズには程遠いが、まんざらでもない出来に採用を決定する。実に集団作業の妙なり。					
ただマヒマヒが録音時不在で、彼の声を収録できなかったことを今でも残念に思っている。					
このアルバムでは、ボーカル録音に関してはファーストテイクを優先的に採用していこうと心に					
決めていた為、ボーカルの収録作業はサウンドチェックから20分で終了。					
その場に立ち会っていた岩田ノリヤが「えっ?もう終わり〜」と呆れ気味に一言。							
鉄は熱いうちに打て。					
歌は早いうちに録れ。下手だけど。					
					

【トウメイムショク】〜【夜】					

作詞作曲を始めた頃の古い2曲。					
10年前に、この曲のピアニスト・木村裕の手によって録音され残されていたDATテープを編集して、			
そこに現在の俺の音を投影させてみようと目論み作業を開始した。					
ギターは自宅にてGibson ES-335をPOD2に直結してHD録音。					
ここではフレーズは勿論のこと、音色にまで細心して作業に臨んだ。					
このギターとの付き合いもかれこれ20年に及ぶが、今でも健気に鳴ってくれるのが嬉しい。					
【夜】のピアノ間奏後のディストーションギターソロがあまりにも個人的趣味丸出しで、					
いかがなものかと共同プロデューサーでもある須藤俊明に聞かせたところ、「良い」との弁。
ちょいと泣き過ぎじゃねぇか?
										
					
【声と朝まで】 					
					
オープンコード 全面参加。					
以前、ソロライブ用にこしらえていたリズムループを、笹原ノブのスタジオにてリメイク。					
不必要なノイズや歪みを除去し、新たなループなどを加えて再構築す。					
高野敏もステレオ・リングモジュレーターで再登場。					
やはり余計な口を挟む必要もなく、サクサクと共同作業は進行する。					
出来上がったオケを自宅に持ち帰って早速ギターソロを録音。入魂し作業をした。						
翌日完成したオケを須藤俊明に聞かせたところ、更にリミックスを施したいと言う。					
2日後のボーカル録音時にそのリミックスバージョンを初めて聞かせてもらったのだが、					
かねてより希求し目指していた音世界が、そこに集約され表現されているではないか。
結実の嬉しさから感傷的になっちゃいけねぇと心を戒め、その後のボーカル録音に臨んだ。		
					
					
					
【ネジを巻くひと】 					
					
アルバムに収録しようと作業を続けていたある作品が、トータル的見地から他曲との					
バランス感を欠いていると判断を下し、ボツとすることに。締め切りも迫っていた為、					
この曲をレパートリーの中から選択し、急遽収録することとなった。					
深夜の録音。ある人の事を考えながらアルペジオを爪弾いた。								
ボーカルは柔らかい質感が欲しかったので、須藤とマイクの選定には時間を割いたが、					
結局コンデンサーマイクに落ち着き、録音を完了した。


関係各位、そしてこれまでお求めいただいた方々に感謝す。			


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